「絵とはいったい何であるのか」
「どんな風に描くものであるのか」という考え方は
絵を描く人ごとに、そして絵を描く職業ごとによって
それぞれに違いがあるものだと思います。
漫画や漫画家にとってもそれは例外ではなく
絵というものに対して
漫画家には漫画の絵に対する独特の
考え方があると私は思います。
まず漫画は読んでくれる人を
常に意識して描くというのが重要であり
当然絵を描く際にもそれが問われます。
とくに読む人が、漫画の一番の華でもある
キャラクターを魅力的と感じるような
絵の描き方が漫画の絵には求められるのです。
つまりを言えば、
『漫画にとっての絵とは
その絵の持っている個性でもって
読み手を魅了し作者の創造した世界に
引き込むためのツール』なのです。
写実的に絵を描ける腕を競うとか
人がどう思おうが自分にさえわかれば
良い絵を描くといった描き方が悪いのでは
ありませんが、読者がいる場合は
読者にお金や貴重な時間を
読んでもらうために費やしてもらうわけですから
描き手は読み手をないがしろにしては
いけません。
一言で言うなら
「描き手が読者を意識して描いていることが強く伝わり
読者が「このキャラクターや世界観が独特で魅力的だ」
「漫画の世界に引き込まれる」と感じるような
絵を描こうとすること」でしょう。
そのためには
その漫画の世界観やテーマに見合った
独特の絵柄を創り出そうとする姿勢や
描き方を心がける事が重要でしょう。
作者のもつ個性や世界観がみるだけで
すぐにわかる絵柄を創り出すのが
重要です。
特に漫画のテーマや世界観にマッチングする
絵柄を描かないことには読者的には
違和感を覚えることになり
その漫画の世界観にどっぷりと入り込む
ことができません。
たとえば「サザエさん」を例に取ると
ほのぼのとした日本の日常光景と、
うっかり者のサザエさんと家族の生活風景
その他の人たちとの交流を基盤にした
コメディーの構成の作品になっていますね。
サザエさんの漫画のテーマや世界観は
その様な感じです。
ゆえにそういった世界観を感じさせる、
その世界観に入っていけるような
温かみや親しみのある絵柄に
なっています。
しかしもし、サザエさんの絵柄が
劇画調の、例えるなら
「北斗の拳」のような迫力や重厚感を
感じさせるような絵柄ならどうでしょうか?
読者はすんなりとサザエさんの世界観に
入っていけるでしょうか?
もちろん漫画の世界観と絵柄のギャップを
面白がるような構成の作品なら
それもありかもしれません。
例えば少年マガジンで連載されていた
「魁!!クロマティ高校」という作品などは
学生達の日常生活を描いたギャグ漫画なのですが
絵柄はギャグ調ではなく劇画調の絵柄に
なっていて、それが逆に読者にシュールさを
感じさせる構成となっています。
おもしろいですね!
しかしそのような特殊な作品形式をのぞけば
多くの場合は
漫画の持つ世界観やテーマがどれほど魅力的でも
その作品の持つ世界観に引き込めるほどの
絵柄の力がなければその漫画のキャラクターの性格や
ストーリーがどれだけ優れていても、
やはり作品としての魅力は減ってしまうと思います。
たとえばスタジオジブリの作品を例えに挙げると
宮崎駿先生のあの絵柄があってこそ
すばらしいキャラクターや世界観、ストーリーに
引き込まれるのです。もしあの絵柄ではなく
そこいらによくある、どこかでみたような絵柄で
デッサンなども崩れていたなら作品の与える
魅力や感動はどうしても減ってしまうでしょう。
それぐらいアニメや漫画には、作品の持つ世界観に
引きずり込めるほどの力をもった独特の絵柄が
求められるのです。
絵柄の作り方には様々な方法があると思います。
では次の記事でそれらに対する私の考えを
綴ろうと思います。